2021年 コロナ後の製薬企業
2021年の医療業界について、製薬編です。今回も独断と偏見でつらつらと書いていきたいと思います。
- 医療機関(前回記事)
- 製薬企業(今回)
- 製薬関連銘柄(追加予定)
製薬会社
コロナの流行により、ワクチン開発が盛り上がりましたが、日本の製薬企業からはほとんどそういった話題は出てきませんでした。
唯一話題になったのは、株券発行屋さんのアンジェスですが、6月に臨床試験結果を発表するとのことです。海外と比べると周回遅れ感がすごいですね。。。
業界動向
製薬でも武田やアステラスなどメガファーマもあれば、万年赤字を垂れ流しながら新薬を開発してるベンチャーまで非常にピンキリです。
最近の製薬会社の動向としては、大手製薬会社は自社での創薬に対してあまり注力しない方針になってきています。
一般的に創薬には非常に長い年月とコストがかかる一方で、成功に至る確率は非常に低いです。
くすりの適正使用協議会によると、
新薬開発の成功率は約2万5千分の1、1つの薬を開発するには9~17年かかるとのことです。
低分子薬から高分子薬やゲノム創薬に舞台は移ってきたので、開発成功確率はだいぶ上がっていると思いますが、主に治験に関する臨床試験で非常に費用がかかります。
フェーズにもよりますが、数百人の薬投薬者に加えて、同数のプラセボ群(効果のない偽薬)を集めて行う試験は非常にお金がかかります。まず薬を試したい被験者の募集が大変です。患者数の少ない疾患だと、被験者が集まらず研究が遅延することが珍しくありません。被験者を探す業者にお金を払い、被験者にもお金を払い、医療機関に協力金を支払い、医療機関や製薬のサポートをする企業(CRO,SMO)などにお金を払いと、とくかく金食い虫です。
そこで近年のトレンドとしては、ベンチャーなどがリスクマネーを集めて開発を進めて、大手は開発が進んでいるパイプラインを共同保有したり、上市後に会社や特許を書いとるケースが増えています。ベンチャーはハイリスクハイリターンの開発を担い、大手はローリスクローリターンで薬の特許期間を加味しながらポートフォリオを入れ替えていくわけです。
患者の多い疾患に対しては、ほぼほぼ薬は出そろってきており、直近で動向が注視されているのはアルツハイマーの薬など、ごく一部です。
そしてブロックバスターと呼ばれる画期的な薬効を持ち、大きな売上が期待できる薬は年々減少傾向です。近年だとギリアドサイエンシスや小野薬品の開発した薬などが該当します。
ブロックバスターが期待できない以上、製薬会社の関心は薬の開発から、薬のポートフォリオ管理と、既存の薬をいかに売るかのマーケティングに移っています。
アフターコロナの製薬
さて、前置きが長くなりましたが製薬に関する今後の動向予想です。
前置きが長くなったのには理由があります。要は、大手製薬はある意味衰退フェーズに入っているということを話したかったわけです。
なんとなくですが、飲料メーカーと業界構造が似てきたのかなと思っています。。。
さて、今後の製薬が衰退産業(ちょっと言い過ぎかもですが)とすると、当然コスト削減も大きなテーマになります。製薬のコストのうち、大きなコストがかかっているのが創薬とマーケティングのためのMRです。
MRとは要は病院を回って、自社の薬を利用・もしくは処方してもらうよう働きかける人達です。エムスリーは前からこのMR不要論を押し出し、MRでなくサイト登録している医師に直接マーケティングを行うことを行ってきました。
順調にMRの出番を奪いエムスリーの業績は伸びてきた一方、多くの製薬はMRも同じように抱え続けていました。やはり、営業が薬の売上を取ってきているという考えも根強く残っていたわけです。
しかし、コロナによりMRの訪問営業が自粛されたものの、製薬企業の業績に大きな影響はありませんでした。患者の受診控えによる影響はあったものの、MRの営業活動制限の影響はあまりみられませんでした。もちろん各社一斉に自粛したので、一社だけであれば結果は違ったかもしれませんが、今まで必要と思っていたMRが実はそこまで重要ではなかったのかもと思い始める契機となりました。
株式投資でいうと、べたですがエムスリーなどには非常に追い風になってくると思います。また、医師の顧客基盤を持っているメドピアも同じく有望だと思います。
また、製薬会社自体でいうと、MRのリストラというニュースに注目かと思います。当然、一時的な費用を計上する必要はあるものの、利益率が数%上昇するとなると割安な銘柄は見直し買いが入るかもしれません。
ただし、長期的には薬価改定により売上・利益が減少していく構図は変わらず、コロナによる緊急の財政出動もあったことから、医療費抑制という方向性に動くのではと考えており、個人的には弱気です。
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